World Topics
フランク・ロイド・ライトの最高傑作「落水荘」。ここにも日本建築のアイデアが!?
日本の浮世絵の熱心なコレクターとして知られるフランク・ロイド・ライト。ライトの作品には、日本の伝統建築からインスピレーションを受けたと思われるものがあります。ライトが受けた日本文化の影響を何回かに渡って紐解いてみましょう。今回は、西本願寺の飛雲閣とライトの最高傑作「落水荘」にスポットを当てます。
京都市にある西本願寺は、浄土真宗本願寺派の本山で、正式名称を「龍谷山本願寺」といいます。1591年に豊臣秀吉の寄進により、大坂天満から現在の京都市堀川六条に移転しました。西本願寺は、1994年に世界遺産に登録された「古都京都の文化財」の一つであり、飛雲閣は金閣、銀閣と並んで「京の三閣」と呼ばれる国宝建造物です。
西本願寺の飛雲閣は池に面して建てられ、池に突き出した1階部分に「舟入の間」があります。訪れる者は、船で1階下の寄り付きに降り立ち、階段を昇って本玄関となる「舟入の間」に入ります。飛雲閣は、玄関の中まで池が入り込んでいる構造で、ほかに正式な入り口はありません。
飛雲閣は、境内の滴翠園の池に建つ三層の柿葺(こけらぶき)の建築です。二層、三層と建物が小さくなり、位置が東に移動する左右非対称のデザインで、見る位置によって変化する外観が特徴です。全体的に柱が細く障子の多いことから、空に浮かぶ雲のようということで、飛雲閣と名付けられたとのことです。
フランク・ロイド・ライトが1935年に設計し、1936〜1939年に建設されたペンシルベニア州の滝の家「落水荘(Fallingwater)」。ピッツバーグのデパート経営者、エドガー・カウフマンの週末の家として設計されたものです。落水荘は、ライトが探究しつづけた「オーガニック建築」の最高傑作であり、2019年に世界遺産に登録された「フランク・ロイド・ライトの20世紀建築作品群」の一つです。落水荘の1階リビングには飛雲閣と同様に、直接水辺へと降りて行くことができる階段が設けられています。
落水荘の屋上を含めたすべてのフロアには、大胆なカンチレバーで広いテラスが設けられ、滝が眺められるデザインになっています。テラスと屋内フロアは、段差のないフラットな造りとなっており、テラスがリビングの延長として使用されることを想定しています。
ライトの日本文化と建築から受けた影響は、落水荘の外部空間と内部空間の相互の浸透性、そして人と自然の調和に見られます。室内空間に広がる滝の音は、松尾芭蕉の侘び寂びの美意識を彷彿とさせます。