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建築学生がタリアセンの農園に蘇らせる、フランク・ロイド・ライトの自給自足のパッション
フランク・ロイド・ライトの有名な建築作品に比べて、ライトの土地と農業への繋がりの情熱については、あまり語られることがありません。ライトは、母親の家族が定住したウィスコンシン州南西部の丘陵地帯にある2400平方kmの農場で、ブドウやリンゴ、野菜、家畜の世話をして、自給自足に近い生活を送っていました。彼の著作と建築図面によると、ウェールズ語で「輝く額」を意味するタリアセンを設計したとき、ライトは、建築が生き生きとした食物の風景に囲まれることを意識していました。
タリアセンは、1世紀以上前にライトが少年時代を過ごしたスプリンググリーンのお気に入りの丘の中腹に、自宅兼設計事務所として建てられました。それまでのプレーリースタイルから脱却して、建築がランドスケープと繋がり、地元の素材を使用しているため、ライトが「ナチュラルハウス」と呼ぶ建築スタイルの好例です。ライト建築のシグネチャーであるカンチレバー(片持ち梁)、広い窓、オープンフロアプランなどをその特徴としています。
ライトは生涯を通して、持続可能性に基づいた建物が周囲と調和すべきだと信じた建築家です。
「農場での苦しい時期に根ざしたライトの自給自足のための実践的なアイデアは、サステナブルな農業が流行している現在、より注目を集めています」と、タリアセンを管理するThe School of Architecture at Taliesinの学部長ビクター・シディは語ります。
タリアセンで建築を学ぶ学生たちは、自ら進んでライトによって拓かれたリンゴとブドウの果樹園を手入れしています。彼らはライトの伝統に従い、学校近くの農園で野菜を育てて、それを毎日の食事の材料に使っています。
33人の生徒は、学校のしきたりとして、キッチンでマスターシェフの調理を手伝う必要があります。シディ学部長によると、食事素材の果物と野菜のおよそ半分から3分の2が、タリアセンの邸宅や学校の近くで収穫されたものとのことです。
フランク・ロイド・ライト財団は、ライトのサステナビリティの遺産をさらに一歩進めるために、タリアセンの農家と共同でコミュニティによる農業プログラムを開始する計画があります。地域の家族は、収穫の売上の一部を前払い購入し、収穫の時期に毎週農産物の配達を受ける仕組みとのこと。近年、スプリンググリーンの800平方kmの農場がオーガニック認定されましたが、これは最終的にトウモロコシと大豆から、果物と野菜に畑を転換する計画の一部でした。
ライトの食物の風景は、毎年数千人のタリアセンを訪れる観光客のツアーの場所としても活用されています。
「ライトが亡くなってから50年の間、タリアセンでは継続的に一部の食物が手入れされてきました。しかし、多くの果物や野菜が中西部までの長距離を移動するため、ガソリン価格の上昇が食料価格を引き上げたことで、数年前まで食物の伝統は本格的には戻っていませんでした」と、シディ学部長は述べます。
「オーガニック建築と環境におけるコンテキスト、そしてウィスコンシン州のライトの個人的なルーツは、まだ明文化されていないストーリーです」と、フランク・ロイド・ライト財団の理事長であるダニエル・マルクヮルトは述べています。
ライトは、彼の理論と有機的実践を教えるために、タリアセンの建設から20年後に、The School of Architecture at Taliesinを設立しました。ライトは、1911年にタリアセンの建設を始めてから、1959年に92歳で亡くなるまでタリアセンに住みましたが、最後の20年間の冬の時期はアリゾナ州のタリアセンウェストで過ごしました。
建築学校も冬季には、スプリンググリーン近くのタリアセンから、米国南西部のアリゾナ州スコッツデールのタリアセンウェストに場所を変えます。ライトの時代には、学生はタリアセンで収穫した農産物をトラックに積み込み、アリゾナに移動しました。
昨年秋、タリアセンの学生たちは、5ケースのグリーントマトをスプリンググリーンからスコッツデールまでトラックで運びました。
「トマトはアリゾナの太陽の下で完熟していました。アリゾナで熟したトマトなんですが、どこかウィスコンシンの匂いが残っていました」と、農園を監督するフィラデルフィアの学生ラッセル・マホニーは語ります。
「アリゾナのライトの冬の家と建築学校では、食物栽培の伝統が失われていました。しかし、タリアセンウェストの食物の風景は、また元の活気に戻りつつあります」
タリアセンウェストにはオリーブの木もあります。
「この冬には3つの小さな農園と温室があります。温室ではチェリートマトを育てているので、1月にトマトを食べることができます。アリゾナでも根付き植物と耐寒性のある野菜は非常にうまくいきます。今は、サワロサボテンの芽でシロップを作る実験に熱中しています」とマホニー。
スプリンググリーンのタリアセンでは、数人の学生がライトがもともと自宅の裏の鶏小屋として設計した寮に住んでいます。寮の学生の一人であるエリック・クラウトバウアーは、最近果樹園で20本のリンゴの木の手入れを始めました。彼は寮の部屋でシードルの発酵実験を行っています。
「わたしの最初のシーズンで、自然にこの土地に興味をいだきました」と、クラウトバウアーは回想します。
「リンゴの収穫時期に、誰もそれらを手入れしていないことに気づきました。だからリンゴを集めてキッチンに持ち込んで醸造を始めたんです」
4人の生徒からなるチームが農園を定期的に運営し、ほかの生徒は必要に応じて参加します。ライトにインスピレーションを与えたランドスケープの食物の手入れをすることは、彼らの創造性とコミュニティの感覚を養うと学生たちは主張します。
「わたしたちが農園にいるときの、コミュニティの共同作業は本当に見ものですよ。みな筋肉を伸ばして、頭をクリアにします。
これは基本的な生活基盤です。自分の世界に閉じこもった建築家に、いったいどんな設計ができるでしょう?」とマホニーは言いながら、農園からイエローチェリートマトを摘み取りました。
「時には農園に入ってはじめて、農園にいる必要性に気づくことがあります」と、生徒のデイブ・フレイジーは付け加えました。
1959年以来タリアセンの建築家であるスティーブン・ネムティンは、テーブルジュース用に収穫されるコンコードブドウを手入れしています。
「タリアセンは人生のすべてを体現しています」そうネムティンは言います。
タリアセンとタリアセンウェストは、2019年に「フランク・ロイド・ライトの20世紀建築作品群」として、米国のほかの6つの建築作品とともに世界遺産に登録されました。
Via:
archive.jsonline.com
taliesin.edu
franklloydwright.org
taliesinpreservation.org
wikipedia.org/wiki/Taliesin_West
vice.com
farmflavor.com